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経営理論解説

「エコノミック・モート(経済的な堀)」とは何か? -競争を避け、高い利益率を保つために重要なこと-

この記事では、「エコノミック・モート(経済的な堀)」について解説をしています。

「エコノミック・モート」の考え方は、ビジネスの強さを判断する上で非常に重要です。
私は投資先を決める際も「差別化できているか?その差別化要因は維持する『モート』があるか?というのは、非常に重視しています。
そして、これまで過去のマルチバガー分析を色々な角度からしてきましたが、マルチバガーになった銘柄の多くは、非常に強い「モート」を持っています。

そんな重要な概念である「エコノミック・モート」について、以下の3つのパートに分けて解説したいと思います。

Part1 そもそも「エコノミック・モート」とは何なのか、ということを説明します。
Part2「モート」のパターンを11類型に分けて紹介します。
Part3 「モート」はどう作られていくのか、ということを考察していきます。
Part4 より深く勉強したい方のために、本記事を書く上で参考にした書籍を紹介します。

解説の中では、具体的な企業の例も入れつつご説明したいと思います。

投資の銘柄分析だけでなく、自分がビジネスをする場合にも役に立つよう書いてみたので、ぜひお読みください。

エコノミック・モートってなに?

ざっくり言えば、「エコノミック・モート(経済的な堀)」とは、厳しいビジネスの世界において、「いかに競争相手に勝つか?」を追求するものではなく、「そもそも競争をせずに済むためにはどうしたらいいのか?」を追求するものです。

例えば、ものすごく目の付け所がいい、ユーザーのニーズにばっちりハマるサービスがあったとします。
そうすると、一時的にはそのサービスの人気は上がり、そのサービスを提供する企業の業績も大きく伸びると思われます。

しかし、儲かる話があれば他の企業もそれに乗っかってくるので、似たようなサービスが他にもいくつか出てきて、競争が激化します。

どんなに優れたサービスであっても、似たようなサービスを持つ競合と競争をすれば、最終的には価格競争になり、自社も競合もともに利益がなくなってしまいます。言い換えると、差別化できていなければ利益を出すことは難しいのです。
上記の例でも、最初はサービスの内容が他の企業とは目の付け所が違ったため、そこが差別化要因となり、業績の伸びにつながっていました。
しかし、最終的には競合他社に真似をされて、差別化できなくなってしまい(=コモディティ化)、厳しい競争にさらされるようになってしまいました。

このようなことになるのを防ぐためには、他社と差別化をしたうえで、いかにその差別化された状況を維持できるかが重要になります。この「差別化された状況」を維持するための方法が「エコノミック・モート」です。

ちなみに、「堀(ほり)」というのは、お城のまわりにあるこういう↓やつです。

外敵は、ここで侵入を阻まれ、お城に近づけません。
これの経済活動版という意味で「エコノミック・モート」と呼ばれています。(名付けたのがウォーレン・バフェットかはわかりませんが、この言葉を広めたのは私の知る限りバフェットです。)
城の本丸=差別化要因
堀=本丸に外敵を近づかせないもの
みたいなイメージです。

ここで重要なことは、「技術が高い」、「いいものが作れる」というのは、差別化要因にはなっても、モートにはならない、ということです。高い技術は、いつかは真似されてしまいますが、モートを築くには、真似されない「仕組み」が必要なんです。

ちなみに、経営学の言葉だと、
差別化要因=競争優位性
モートに守られた差別化要因=持続的競争優位性
と明確に区別して考えられており、持続的競争優位性の確保を目指すべきだとされています。基本的な考え方はモートと同じですね。

まとめると、以下のようになります。

  • 他社と同じような製品を出している(=差別化ができていない)と、価格競争をせざるを得なくなり、利益が減る。
  • 高い利益率を保つためには、他社と差別化をしたうえで、競合が真似してくるのを防ぎ差別化された状況を維持するための「堀」が必要
  • 「技術が高い」、「いいものが作れる」というのは、差別化要因にはなっても「堀」にはならない。高い技術もいつかは真似される。堀を築くには、真似されない「仕組み」が必要

エコノミック・モートの11パターン

エコノミックモートは、いくつかのパターンに分けることができます。
今回はモートを11のパターンに分けて、順番に解説します。

  1. ブランド
  2. 特許
  3. プロプライエタリ(独占的な)・テクノロジー
  4. スケールメリット
  5. ネットワーク効果
  6. AIによるデータ活用
  7. 法規制
  8. 場所・アクセス
  9. 限られた資源
  10. 高い乗り換えコスト・囲い込み
  11. トレードオフを伴うバリューチェーン

1.ブランド

強いブランドは、それまでの活動の積み重ねによって作られているので、非常に真似することが難しいです。下手に真似をしようとすると、「模倣品」、「まがい物」と認識され、むしろマイナスイメージにつながることもあります

強力なブランドはたくさんありますが、代表的な例としては、コカ・コーラやフェラーリなどがあげられます。

コカ・コーラのブランドの強さを表す印象的なエピソードがあるので、紹介します。
1970年代、コカ・コーラの競合であるペプシ・コーラは、目隠しした消費者にペプシ・コーラとコカ・コーラを飲み比べてもらい、美味しいと思う方を指し示してもらう、というテストをしました。全米を回ってテストを行ったところ、結果はなんとペプシの圧勝でした。
事態を重く見たコカ・コーラ社は味を変えた「ニュー・コーク」を開発し、販売しました。
しかし意外なことに、消費者からは「こんなのコーラじゃない」、「昔の味を返せ」と抗議が殺到。結局味を元に戻すことになりました。そして今日もコカ・コーラは、炭酸飲料市場のシェアトップを守り続けています。ペプシに負けた味のままで
要するに、人々は「おいしいコーラ」が飲みたいのではなく、「コカ・コーラ」が飲みたいのです。競合は、どんなに品質を上げても勝てない。これこそが強いブランドです。

2.特許

特許により、技術を真似されることが防げるため、強い技術力を持つ企業にとっては非常に効果的なモートになります。
製薬会社は業界全体的に利益率が高いといわれています。これは薬に特許がかかっており、他社が類似品を製造できないため、高い価格で薬を売ることができるためです。

なお、特許は永久ではありません。有効期限が決まっており(原則20年)、特許が切れると他社が真似してよいということになります。
例えば製薬業界では、特許が切れると、他社が効果が同じ製品を安く販売してくる(これをジェネリック薬品と言います。)ため、その薬では利益が得にくくなります。

3.プロプライエタリ(独占的な)・テクノロジー

プロプライエタリ・テクノロジーとは、開発メーカーなどが独占的に保持しており、情報が公開されていない製品やシステムの仕様、規格、構造、技術を言います。

例としては、Googleの検索アルゴリズム等です。

シリコンバレーの有名な起業家、ピーター・ティールは、著書ZERO to ONE(下の参考書籍でも紹介しています。)の中で、独占企業(≒持続的競争優位を持つ企業)が持つ特徴として①ネットワーク効果 ②規模 ③ブランド ④プロプライエタリ・テクノロジー の4つを上げており、プロプライエタリ・テクノロジーを「ビジネスのいちばん根本的な優位性だ」と述べています。

一方で彼は、プロプライエタリ・テクノロジーは「本物の独占的優位性をもたらすようないくつかの重要な点で、二番手より少なくとも10倍は優れていなければならない」と述べています。
逆に言えば、2、3倍優れいている程度のインパクトでは他社と差別化できずに埋もれてしまうということです。
技術力を磨いて製品・サービスの品質で真っ向勝負することの難しさがよくわかりますね。

なお、プロプライエタリ・テクノロジーは「他社より優れた技術」という点では先述の特許と似たところがあります。
プロプライエタリ・テクノロジーの場合、特許法等の法的制約によって真似ができないのではなく、どうなってるかが公開されていないから真似ができない、という点が特許と異なります。

高い技術を開発したときに、特許を取得するか、プロプライエタリ・テクノロジーとして扱うか、どちらを選択する方がメリットが大きいのかは、一般的な答えはありませんが、そのタネを知られずにいることが難しいような技術であれば、特許をとった方がよいでしょう。
例えば、その技術が使われている製品を買った人が、その製品を解体すれば大体タネが割れてしまうのであれば、隠すことは困難です。

4.スケールメリット

規模の大きさも、強力なモートとなります。

例えば、100万円の機械を使って作る製品Aがあるとします。製品Aを作るのに、材料費が2,000円だとして、他に経費はかからないとしましょう。(実際には広告費とか事務費とか他にも色々かかりますが、今回は簡略化のためないことにします。)

この時、製品を100作る場合の製品A1個あたりのコストは、
・機械の購入費1万円(100万÷100個)+材料費2,000円=12,000円
となります。

一方で、製品を200個作る場合の製品A1個あたりのコストは
・機械の購入費5,000円(100万÷200個)+材料費2,000円=7,000円
となり、100個しか作らないときに比べて半分近くまで下がります

この、たくさん作れば作るほど一個当たりのコストが低くなることを「スケールメリット」と言います

機械を買う費用だけでなく、研究開発費も、広告費も、製品を売れば売るほど1個当たりの研究開発費・広告費が下がりますし、ものを作る場合だけでなくサービス業の場合でもそうです。
また、大口顧客になると、仕入れをするにも値引き交渉がしやすくなり、仕入れコストがしやすくなるというケースもあります。

後でも詳しく書きますが、このモートの強いところは、「正のフィードバックループ」が働く、というところです。

①お客さんが増える
→②スケールメリットが働き、商品1つあたりのコストが下がる
→③商品1つあたりの価格を下げることができる
→(最初に戻って)①お客さんが増える

という感じで強者がさらに強くなっていきます。

より発展的なパターンだと

①大規模な生産設備
→②スケールメリットが働き、商品1つあたりのコストが下がる
→③商品1つあたりの価格を下げることができる
→④価格競争でライバルに勝てる
→⑤競合がいなくなる
→⑥価格を上げてもよくなる
→⑦利益が増える
→⑧設備投資や研究開発に回すことができる
→⑨製品・サービスの質が向上する
→(最初に戻って)①お客さんが増える

という好循環のサイクルも成立します。

TSMCの例

このいい例がTSMC(台湾セミコンダクター)はスケールメリットを生かして、上記の好循環サイクルをぶん回し、他の企業の追随を許さない企業になっています。まさに

①大規模な生産設備
→②スケールメリットが働き、商品1つあたりのコストが下がる
→③商品1つあたりの価格を下げることができる
→④価格競争でライバルに勝てる
→⑤競合がいなくなる
→⑥価格を上げてもよくなる
→⑦利益が増える
→⑧設備投資や研究開発に回すことができる
→⑨製品・サービスの質が向上する
→(最初に戻って)①お客さんが増える

のパターンです。

特に半導体は、最先端の半導体製造装置の希少価値も相まって、「設備投資がしっかりできる」ということの優位性が他の業界以上に際立っているように思います。

TSMCについてはこちらの動画がわかりやすいです。スケールメリットを生かしたTSMCの優位性については、18:10 あたりからお話されていますので、よかったらご覧ください。

5.ネットワーク効果

今回紹介するモートの中でもトップクラスに強力なのがこのネットワーク効果です。

ネットワーク効果とは、同じ製品やサービスを利用するユーザーの増加により、その製品やサービス自体の効用や価値が高まる効果のことを言います。

Amazonの例

例で言うと、AmazonなどのECプラットフォームがあります。
皆がAmazonで買い物をするのは、Amazonには沢山の製品とその売り手がいるからです。
一方で、売り手がAmazonで出品する理由は、多くの人がAmazonで買い物をするからです。
このように、大量の買い手が売り手の効用を高めてさらなる売り手を呼び、大量の売り手が買い手の効用を高めてさらなる買い手を呼ぶ、と言うポジティブなループが出来ています。

このような「鶏が先か卵が先か」が成り立つ事業では、後から参入する業者は非常に追いつくのが大変になります。買い手がいないECサイトに出品する売り手はいませんし、売り手がいないECサイトで買い物しようとする買い手はいません

iPhoneの例

あなたは新しいスマートフォン作って売ろうとしたとします。
あなたはものすごく頑張ってとても処理速度が速くデザインがかっこいいスマートフォンを作ることができたとしましょう。

このとき、あなたのスマートフォンはiPhoneに勝てるでしょうか?残念なことに、おそらくあなたのスマートフォンは全く売れないでしょう。
なぜなら、iPhoneのブランドには敵わないというのもありますが、何より重要なのは、iPhoneにはたくさんのアプリがあるのに、あなたが作ったスマートフォンにはない、ということです。
アプリも碌になく、電話ができてネットが見れるだけのスマートフォンをわざわざ選ぶ人はいません。
しかも、iPhoneのアプリはアップルが作っているわけではなく、無数のアプリ開発事業者が作っています。そのため、あなたがiPhoneのようにアプリを充実させようと思っても、自社のスマホ用のアプリを開発してくれる数千数万の事業者を見つけるか、自社で全部開発するかしなければなりませんが、そんなことはとても不可能です。
つまり、「iPhone用アプリを開発してくれるアプリ開発者がたくさんいる」という状況が、アップルにとっての「モート」になっているということです。

ちなみに、Yahoo Financeによれば、アップルの純利益率は、2020年の決算ベースで25%となっています。日本の企業の利益率の平均が5%程度といわれているので、アップルの利益率は非常に高いといえます。この高い利益率を支えているのが先ほどの「モート」なのです。

マスターカードの例

クレジットカード事業もこのネットワーク効果のメリットを享受しています。

例えばマスターカード。私達がマスターカードを持つのはマスターカードで決済できるお店が多いからですし、マスターカードで決済できるようにしているお店が多いのはマスターカードを使いたがるお客さんが多いからです。

このような強力なネットワーク効果を背景に、マスターカードは営業利益率57%、純利益率48%という異常ともいえる利益率を叩き出しています。(2019年度の数値です。Yahoo Financeを参照しています。)

その他

他にも、東証やS&Pなどの取引所や、FacebookなどのSNSもネットワーク効果が働く例ですね。

そう考えると、Amazon、Apple、Facebookなど、ここ10年くらいで大きく業績を伸ばした企業はネットワーク効果を有効に活用しているところが多いですね。

ちなみに、ネットワーク効果とよく一緒に出てくる単語に「プラットフォーム」があります。
注意点として、成功しているプラットフォームビジネスにネットワーク効果をうまく使った銘柄が多いのは事実ですが、プラットフォームビジネスだからといってネットワーク効果が一様に働くわけではない、というのはご留意いただいた方がいいと思います。

最近は「プラットフォーム名乗ったもん勝ち」みたいな雰囲気もあり、自称プラットフォームが乱立している節もあるので、「このプラットフォームはネットワーク効果がちゃんとはたらく仕組みになっているかな?」というのは個別に考えた方が良いと思います。

6.AIによるデータ活用

ビジネスにおけるAIの活用が進むにつれて、データの重要性は日増しに大きくなっています。

今のAIの主流である機械学習は、ざっくりと言えば「大量のデータから統計分析によりパターンを把握し、そのパターンを活用して、ある事象に対し最適と思われる回答を返す。」ということをしています。

なので、大量のデータを有しており、AI等によりそのデータを有効に活用できるのであれば、データを持たない企業に対してモートを築くことができます。

Amazon・Facebookの例

先ほどからAmazonばかりで恐縮ですが、わかりやすいのでまたAmazonを例にすると、
・A、B、CさんはAmazonで過去に買ったものを分析すると、似た商品を買っている。
・似た商品を買っているということは、好みが似ているのだろう。
・A、Bさんは商品Xを買ったことがあるが、Cさんはまだ買っていない。
→Cさんに商品Xをおすすめしよう
というような感じです。

Amazonが私たちの好きな商品の傾向がわかるのは、過去に誰が何を買ったかの膨大なデータをAmazonが持っているからです。
Facebookが高精度で「知り合いかも」にあなたの知り合いを表示させられるのは、誰と誰が知り合いなのかの膨大なデータをFacebookが持っているからです。
そのため、AIを有効に活用するためには、データが必要であり、AmazonやFacebookが保有するデータが競合とのモートとなります。

とはいえ、レコメンドが多少ダメでも、AmazonやFacebookは使うような気もして、あんまりすごさが伝わらないかもしれませんので、よりサービスのコア部分にデータ活用を絡めている例を紹介したいと思います。

CrowdStrikeの例

先日別の記事でも書きましたが、$CRWD もこのパターンです。

CRWDは、監視している端末がおかしな行動が見られないかどうかということを、AIを使って解析しています。そして、このAI解析のために必要な、過去のインシデントの情報をCRWDはたくさん持っています。
この情報量の優位は、

 インシデント情報を沢山持っている
→AIによる解析の精度が上がる
→より高いセキュリティが提供できる
→顧客が増える
→よりたくさんのインシデント情報が手に入る

という「正のフィードバックループ」によってますます強まっていき、競合に対して強力なモートを形成します。データの有無がサービスのパフォーマンスにもろに影響するため、大きなモートになると考えています。

アントフィナンシャルの例

こちらも別の記事で解説していますが、アントフィナンシャルは、総合的な個人向け金融サービスを提供しており、それらの事業を通じて得た、
・これまでのローン支払い実績
・収入の額
・消費の量や内容
・運用資産額
等の濃ゆい情報を大量に手に入れることができます。

また、それらの情報を解析することで、ユーザーの信用スコアを算定しています。

大量の個人情報と信用スコアの組み合わせは、CRWDと同じように、正のフィードバックループを生みます。具体的には以下のような感じです。

 大量の個人情報を持っている
→高い精度の信用審査が可能になる(しかも、ユーザー側はめんどくさい情報提供不要で便利)
→最低限の金利で迅速な融資が可能になる
→顧客が増える
→よりたくさんの個人情報が手に入る

こうした作用がモートとなって、後発企業が追い付くのは非常に難しくなっています。

その他の例

最近はこのモートを活用している企業もかなり増えていて、

  • 普段の生活データをAIで解析して、どのような生活習慣病のリスクが高いか、その対策としてどのような行動をとるべきか教えてくれるLivongo health(現 Teladoc health)
  • テストの結果をAIで解析して得意分野や苦手分野を把握し、苦手分野を重点的に教えてくれる Duolingo

などがあります。

このようなサービスは、データをとればとるほど的確にリスクの高い病気、勉強の苦手分野を把握できるようになるため、サービスの質がどんどん上がっていきます
仮に今後、素晴らしいAIアルゴリズムを引っ提げて競合が入ってきたとしても、データが蓄積されていない参入直後は、大量のデータを食べて成長した先行企業に勝てず、使われないでしょう。使われなければデータは貯まらず、データを貯めてよりよいサービスを提供するライバルとの差は開くばかりです。

このように、データと、データを活用してサービスを向上させる仕組みが組み合わさった時、非常に強力なモートができるのです。

注意しなければならないのは、AIにデータがなければならないのと同様に、データばかり集めても、活用方法がわからなければ意味がない、ということです。顧客データは、サービスの向上と結び付けて初めて意味があります

なので、「うちの会社には優れたアルゴリズムがある!」という企業には、「じゃあデータの方はどうやって持ってくるんだろう?」ということを突っ込み入れつつ考え、「うちの会社は大量の顧客データをかかえています!」という企業には、「じゃあそのデータから何がわかるの?」という突っ込みを入れつつ分析しましょう。

7.法規制

参入に法規制がある業界は、新規参入者が簡単には入ってこれないため、競争が緩やかになります。
例としては、電力・通信などのインフラ系はそれに該当します。

法規制は、特許と違って基本的には永久的なものです。
一方で、競争が緩やかなのを良いことにあまりに多額の利益を稼いでいると、規制している役所の方から価格を下げろだのと介入が入ることもあるため、面倒も多く、必ずしもメリットばかりとは言えません。

このモートはあんまり書くことがないのでこの辺で終わります笑

8.場所・アクセス

これは、廃棄物、水、セメント等、重いものを取り扱う業種で重要になります。
このような重いものは、製造・加工場所と使う場所が離れていると輸送費がかさむため、各事業者の商圏は製造・加工場所から近い範囲に限定されます。そのため、他社と商圏を争うことになりづらいのです。

一方で、自身も狭い商圏から抜け出しにくく、守りやすいが攻めにくいという状況になりやすいため、注意が必要です。

このモートもあまり発展的なものではないのですが、一つ面白い亜種があります。それは「ドミナント戦略」というものです。

ドミナント戦略とは

ドミナント戦略とは、リアル小売店舗が採る戦略で、一部のエリアに集中的に出店し、そのエリアの需要を飽和させてしまうというものです。
これをやると、既に市場は飽和しているので新規参入者は旨味がなくなり、結果的に集中出店した企業がそのエリアを独占できます。

この戦略は、かつてウォールマートが採ったことで有名な戦略です。ウォールマートは、需要の多いエリアではなく、敢えてマーケットの小さい(=飽和させやすい)郊外から店舗を広げることで、ライバルとの競争を避けてきました。

最近では、GrowGeneration($GRWG)はドミナント戦略を意識しているのではないかと思います。
面白いのは、GRWGがドミナント戦略を取っているのだとすれば、全米で一斉に大麻が解禁されることは、必ずしもGRWGにとっていいニュースとは限らない、ということですね。

これまでは、段階的にエリアが拡大されてきたため、そのエリアへの集中出店も比較的やりやすかったのではないかと思います。一方で、一斉に全米で解禁されれば、一部のエリアに集中出店してそのエリアだけ独占するか、広く浅く出店するか選ばなければならなくなるかもしれません。

これは、競合の出方や、そうなった時のGRWGの資本の状況にもよる(もしかしたら全米を一気に飽和させるような超絶攻めの姿勢を見せてくるかもしれない)ので、もちろんGRWGの有利に働く可能性もありますが、必ずしも急速な市場拡大が良いことばかりではない、というのは興味深いポイントかなと思います。

9.限られた資源

石油、天然ガス、金等の資源は、埋蔵されている場所が限られているため、それらが手に入る場所の所有権を持っていれば、ライバルに対して非常に強い立場に立つことができます。

このモートもあんまり書くことがないのでこの辺で。

10.高い乗り換えコスト・囲い込み

乗り換えコストとは、例えば、社内で今使っているシステムAを、他社製品のシステムBに切り替えるような場合のコストを指します。AからBに切り替えるコストが高いほど、同じサービスでも先行企業が後発企業に勝ちやすくなり、Aは競争上優位になります。
ここでいう「コスト」は、お金がかかるかどうかという話ではなく、乗り換えにかかる手間や、乗り換えがうまくいかないリスクのことを指しています

システム切り替えの例

企業の人材管理システムを切り替えようとしたとします。人材管理システムは、社員のデータをデータベースに大量に持っているので、新しいシステムを入れるとなれば、そのデータを新しいシステムに移さなければなりません。
しかし、一言に社員のデータと言っても、システムによって項目、順番、表記の仕方(半角か全角か、数値データか文字データかなど)が違うため、移行は結構大変です。場合によっては、上手くデータが移行できず一部のデータが消えてしまうというリスクもあります。

このため、このようなデータ移行を伴うシステムは、「なんだかあっちのシステムの方がちょっと便利みたいだけど、データ移行大変だし、別に今のシステムにそんな不満あるわけでもないから、今のままでいいかなあ」となりやすく、競合を撃退しやすいのです。

別の例としては、ソフトを切り替えると、新しいソフトの使い方をまた1から覚え直さなきゃいけない、というのも切り替えコストに当たります。今のソフトに慣れていればいるほどそのコストは大きくなります
例えば私は、ほぼ毎日マイクロソフトのエクセルやパワポを使って仕事をしていて、操作方法やショートカットなどは完全に慣れています。
慣れすぎているので、ちょっと操作方法やショートカットが変わっただけでも、ものすごいストレスになり、これが、私がWindowsを使い続ける理由になっています。
この先、エクセルよりちょっと便利な表計算ソフトが出ても、アップルよりオシャレなPCが発売されても、僕はWindowsを使い続けるでしょう。

この切り替えコストは、そのサービスがユーザーの急所を抑えているほど大きくなります。

医療機器や医療サービスの例

例えば手術ロボット。こういった機器は使い慣れるのに時間がかかる一方で、少しでもミスしたら患者の命に関わる可能性もあります。
そう考えると、仮に手術ロボットを切り替えるとなったら、せっかく苦労して習熟した旧機器のノウハウを捨てて、また新しい機器の訓練を積んで実践で使用可能なレベルまで高めなければなりません。
普通の道具だったら使ってミスしながら慣れていくこともできますが、命に関わるとなればそうもいかないので、最初の訓練は相当大変なはずです。

また、「乗り換えるほど新しい機器・サービスは本当に優れているのか?」という確認についても、買い手は相当シビアになると思われます。
普通の企業のシステムなら、試しに使ってみてダメそうならやめとく、という手もありますが、「試しに使ってみたら患者さんに思わぬ作用が出た。」とか「いざというときに誤作動起こした。」なんてことになったら大変なので、「これなら大丈夫!」と確信に近いものがなければ乗り換えないのではないか、と思います。ハードルは相当高いはずです。

サイバーセキュリティの例

サイバーセキュリティは、昨今ますます企業のクリティカルなテーマになっています。

そのため、この分野も「とりあえず他のものも試してみて、もしダメだったら元に戻せばいいや」ってことにはなりません。相当吟味して、今のセキュリティ対策よりも良いと確信を持てるものでなければそっちに変更したりはしないはずです。

また、企業は、自社のサイバーセキュリティを守ってくれる企業に対しては自社の相当機微な情報も晒すことになるため、その意味でも信用できる相手でなくてはなりません。

なので、サイバーセキュリティもスイッチングコストは高く、顧客をがっつり囲い込める分野といえるでしょう。

以上のように、そのサービスがユーザーにとってクリティカルなものであればあるほど、スイッチングコストは高くなり、ちょっとの性能差くらいでは乗り換えは起こらないのではない、ということです。
なので、「このプロセスでミスったらやばそう」と感じるポイントを押さえている企業は、モートが強いと考えています。

11.トレードオフを伴うバリューチェーン

バリューチェーンとは、「企業が製品を設計、生産、販売、配送、サポートするために活動の集合」です。(後で紹介する「マイケル・ポーターの競争戦略」P107からの引用)

これだけだとよくわからないと思うので、例を出して説明します。

サウスウエスト航空の例

有名な例に、元祖LCCのサウスウエスト航空があります。

サウスウエスト航空は、中都市の空港と大都市の二次的空港という短距離2点間を結ぶサービスを、それまでの航空券価格に比べ非常に安い値段で提供し、他の航空会社に衝撃を与えました。

サウスウエスト航空が他社よりも安い価格でサービスを提供できる背景には、以下のようなポイントがあります。
空港使用料(航空会社が空港に支払う場所代)が高い大空港を避け、中都市の空港と大都市の二次的空港を利用する。
機内食やファーストクラス、ビジネスクラスのシートは提供せず、オペレーションを簡略化することで業務効率を高める。
乗継客の荷物は移送せず、自分で運んでもらう
乗継便との時間調整はしないことで、待ち時間などを減らし、効率的かつ安定的に飛行機を飛ばすことができる。
ボーイング737へ統一し、メンテナンスを効率化する(機体が色々あると整備の仕方を機体ごとに覚えなければならず手間)ことで、空港についてから次に出発するまでの時間を短縮し、少ない飛行機でより多くの人を運ぶことができる

ざっくり言えば、とにかく「空港から空港に人を運ぶこと」に特化したのです。

このサウスウエスト航空の動きを見て、多くの従来型の航空会社が真似をしようとしましたが、結果的に失敗に終わりました。

なぜ他の航空会社には真似ができなかったのか?ここでポイントになるのが、トレードオフです。
つまり、成功している事業の真似をしようと思うと、自分の今のサービスや強みを何らかあきらめなければならない、という状態のことを言います。それがなければ、優れたバリューチェーンでも真似できてしまいます。

従来の航空会社の利用客には、2点間の短距離移動だけでなく、そこから国際線へ乗り継いで長距離移動をする人も多く含まれていました
そのため、サウスウエスト航空に比べ、
・乗り継ぎのためには、多くの国際線が集まる大空港にとまらなければならないため、空港使用料の安い中都市の空港と大都市の二次的空港に絞ることはできない。
長距離を移動するため、機内の居心地やサービスの重要性が高く、機内食やファーストクラス、ビジネスクラスのシートをなくすことは難しい
乗り継ぎ時の荷物移送ニーズが高く、自分でやってくれとは言いにくい。
他の便から乗り継いでくる利用客も多く、それらの利用客を待たずに先に出発することは困難
といった特徴を持っていました。

サウスウエスト航空の真似をしようと思うと、上記の問題をなんとかしなければならないわけですが、自らサービスの質を落とすとも思えるこの決断を多くの航空会社は行うことが出来ず、結果としてサウスウエスト航空のバリューチェーンは、真似のしにくい強固なものとなりました

今でこそLCCの航空会社は増えていますが、LCCと通常の航空サービス両方をやっている会社というのはあまり見かけないのを見ると、やはりこのトレードオフは今も強力に働いているということなのだと思います。

Amazonの例

別の例でいうと、Amazonもまた難しいトレードオフを乗り越えて、他社には真似のできないバリューチェーンを作りあげています。

Amazonの良いところに、「今日買ったものが明日届く。」というものがあります。これは、Amazonが自ら倉庫を持ち、物流網を持っているから可能なサービスです。このサービスは、他のECサイトには真似することが難しく、Amazonの地位を守る強力なモートとなっています

なぜ他社はAmazonの真似ができないのでしょうか?
ECサイトは、メルカリや楽天を思い浮かべていただくとわかりやすいかと思いますが、これらのサイトは「売り手と買い手を結びつける」というプラットフォーム機能や決済機能を持っているものの、役割としてはあくまで仲介であり、商品の在庫管理や郵送は出品者に任せられていることが多いです。
そのため、メルカリや楽天が「この商品を今買えば明日中には必ず届けます!」と勝手に約束することはできません。それは出品者次第です。

プラットフォーム事業というのは非常に優れたビジネスモデルで、プラットフォーム上で取引する人がいればほっといても手数料収入が発生するため、一度軌道に乗れば非常に効率的に利益を稼ぐことができます。

一方で、固定費の割合はできる限り減らし、在庫は極力少なくすることがビジネスのセオリーです。
固定費率が高いと、少し売上が下がっただけで利益が大きく減るためリスクが大きいですし、在庫を抱えると需要が急に減った時に安値で売らなければならなくなるリスクが大きい、単純にものをとっておく場所の確保にお金がかかる等のデメリットがあるからです。
つまり、莫大な投資を行って自ら倉庫と物流網を作り上げるというAmazonの選択は、セオリーを考えればある意味「邪道」であり、プラットフォーム機能の提供に特化する方が正統派なのです。そのような背景があるため、Amazonの真似をして「明日までに届けます!」と言いたくても、そのために自前で倉庫と配送網を持つ方向に踏み切るのは非常に難しいのです。

なお、公平を期すために補足をしておくと、超有名成長企業であるAmazonのEC部門は、実は決して利益率の高い会社ではありません。「利益を出すくらいなら投資する」というスタイルで、数年前まで長らく赤字を続けてきました。最近でこそAmazonは黒字を出すようになっていますが、この利益もクラウド事業が儲かっているからで、ECでたくさん稼いでいるというわけではありません。そのため、Amazonのビジネスモデルが楽天やメルカリよりも優れていると一概には言い切れません。

しかし、Amazonのバリューチェーンが非常に真似がしにくく、かつユーザーの利益に直結する優れたものであることは事実なため、ここで紹介しました。

バリューチェーンについては語り始めるとキリがないほど奥深いので、ここら辺で止めておきます。続きの記事で参考文献を紹介しようと思うので、「もっと知りたい!」とご興味持っていただけた方はそちらをご覧ください。

成り立ちから見た「エコノミックモート」のパターン分け

というわけで、ここまでモートの類型として11のタイプを紹介してきましたが、それらのモートを「どのように作られるのか?」「どのようにして強化されるのか?」という観点から、4つに分類しました。

 それぞれについて解説していきます。

自己強化するモート

この堀は、事業が成長するにつれて、半自動的に強まっていきます
その仕組みを理解していただくため、以下のイメージ図をご覧ください。

例えば上述の「スケールメリット」の場合、
①お客さんが増える
→②スケールメリットが働き、商品1つあたりのコストが下がる
→③商品1つあたりの価格を下げることができる
→④価格競争でライバルに勝てる
→(最初に戻って)①お客さんが増える
という好循環のサイクル(正のフィードバックループ)が成立します。

このサイクルによって、①~④のどこかが成立すれば、連鎖的に他の3つも達成しやすくなるため、一度軌道に乗ると、どんどんモートが強くなっていくのです。

そのため、このタイプの堀は一度確立してしまうと非常に崩すのが難しい、強力なものとなります。ライバルからしたら、自分がせっかくがんばっても敵もどんどん強くなっていくのですから、追いつくのは相当大変です。実際ネットワーク効果が効きやすい業界では、勝者総取りな状態になりやすいです。

以上のとおり、モートがどのように作られ、どのように強化されるのを紹介してきました。なぜこのようなことをお話したかと言うと、私はモートはどうやって作られるのかを理解することは、ビジネスを成長させるうえで非常に重要だと考えているからです。

Amazonの例

Amazonがどのようにモートを築いたのか、そのエピソードが大変勉強になるので紹介します。

以下の図をご覧ください。(「ベゾス・レター」より引用)

画像5

この図は、Amazonのビジネスモデルがどのように強化されていくかを表した図で、Amazon創業者のジェフ・ベゾスが事業の構想を作っているときにレストランのナプキンに書いたものとされています。

分解してみると、まず「①トラフィック(=取引量)→②売り手→③品揃え→④カスタマーエクスペリエンス」のサイクルがあります。これは「ネットワーク効果」のサイクルです。
これに加えて、「①成長→②低コスト構造→③低価格→④カスタマーエクスペリエンス」のサイクルがあります。これは「スケールメリット」のサイクルになります。

Amazonは、「ネットワーク効果」と「スケールメリット」の堀を組み合わせてより強固なものとしているわけですね。

ここで重要なことは、ジェフ・ベゾスは最初からこの構造を意識して事業拡大のストーリーを描いていた、ということです。

Amazonのこれまでの成長の仕方を見ると、確かにこの構造を意識しているように思えます。

今でこそ家電や生活用品も売っているAmazonですが、最初は本だけでした。ECであれば、超大型店舗にしかないような希少本も売りやすいため、品ぞろえで既存の本屋に対し勝負できる(いわゆるロングテール戦略ですね。)、言い換えれば他社よりもいいカスタマーエクスペリエンスが提供できるとの判断でした。
最初から本以外も含めて商品展開していたら、他社よりも良いカスタマーエクスペリエンスを早い段階で提供することは難しかったでしょう。ロングテール戦略が刺さりやすい本市場に絞ることで、サイクルを回すとっかかりを作ったわけです。

本を求める顧客を集め、トラフィックが増えてくれば、Amazonのプラットフォームを売り手にとっても魅力が高まります。
それは、必ずしも本の売り手だけでなく、本以外の売り手にとっても同じです。本以外の売り手がひきつけられれば、本以外の品ぞろえも拡大しやすくなります。
そうすれば更なるカスタマーエクスペリエンスにつながり、同時にスケールメリットによるコスト低減にもつながっていきます。

こうして、徐々に徐々にAmazonは事業成長のサイクルを回していき、今の姿になったのです。

実際にサイクルを回せる段階にまだ到達していなくても、早期にサイクルを構想した上で、サイクルのいずれかの要素(Amazonの例であればカスタマーエクスペリエンス)に意識的に働きかけることで、成長サイクルを作り、回転させられる可能性が高まります

そのため、モートの成り立ちを理解しておくことが大事ですね。

自己強化するモートの注意点

そんな強力な「自己強化するモート」ですが、2つほど注意点があります。

1つめの注意点は、事業が軌道に乗るまではあまり効果を発揮しないということです。
1度軌道に乗ったら強いものの、一定程度の顧客数やデータを集めるまでは、販促を頑張る、ユーザーエクスペリエンスを磨きこむ等、地道な努力が必要になります
「自己強化するモート」が最も威力を発揮するのは、そういった努力が実を結び、ある程度自分の事業が成長した後で後発のライバルを倒すときです。なので、銘柄分析でこのタイプのモートを評価したり、自分のビジネスに「自己強化するモート」を取り入れようとする場合には、その性質を理解した上で検討しましょう。

2つめは、衰退の時もサイクルは回りうる、ということです。
例えば
スケールメリットの場合、圧倒的な品質の商品を他社がリリースし、コスト面の優位が覆されてシェアが奪われたとき。
ネットワーク効果の場合、割引キャンペーンによって他社のサービスに買い手が多く流れたとき。
データ活用の場合、競合がデータ分析によらず非常に優れたサービスを開発した時
以下のように、ビジネスは衰退方向のサイクルを回り始めます。

成長時はポジティブな方向に回っていたサイクルが、衰退時にはネガティブな方向に回り始め、勢いを止めるのが難しくなります。
このため、「自己強化するモート」は、非常に高い防御力を持つ反面、一度突破されると一気に形成が逆転する可能性もある、ということも頭に入れて、強いモートを作ったとしても油断せず、競合の動向には目を光らせておいてください。

努力でつくるモート

特許、プロプライエタリ・テクノロジー、ブランドは、「自己強化するモート」のように、サイクルで強化することができます。ただし、「自己強化するモート」とは違って半自動的とはいかず、能動的なアクションによって作られます。
以下の図をご覧ください。
「自己強化するモート」との大きな違いが、図の赤いところになります。

特許やプロプライエタリ・テクノロジーであれば、それらを活かして得た利益を研究開発に投資することで更なる技術の開発につなげます。製薬会社や機器メーカーはこのパターンが多いです。
また、ブランドであれば、そのブランドを活かして得た利益をマーケティング活動に投資することでさらにブランド力を高めることができます。コカ・コーラやP&G等の消費財メーカーに多いパターンです。
このように、研究開発やマーケティングといった能動的な投資が必要になることと、研究開発やマーケティングは必ずしも顧客増、利益増につながるとは限らず、そこがつながらない場合にはサイクルが成立しなくなる、という点が「自己強化するモート」との大きな違いです。

しかし、これは必ずしも悪いことではありません。能動的な投資が必要になるということは、逆に言えば投資すれば0からでも作れる、ということです。
「自己強化するモート」の場合、サイクルをどこから始めればいいのかが難しかったのですが、こちらの場合は、研究開発やマーケティングから始めるしかありません。
研究開発やブランド作りがうまくいけば、「自己強化するモート」よりも素早く堀を作れる可能性もあります。最初は技術力やブランド力で勝負をしつつ、成長するにつれてスケールメリットやネットワーク効果を活用してより盤石な体制を作る、というのが一つの勝ちパターンだと思います。

受け専門のモート

法規制、場所・アクセス、限られた資源。
これらのモートは、二つの意味で受け専門と言えます。

1つめに、これらの堀は、自力では作れず、あるものを活用するしかない、という点で「受け」と言えます。自分の都合のいいように法規制を作ることはできませんし、土地や資源は有限なため、見つけたり買うことはできても、基本的にはゼロサムゲームであり、技術やブランドのように自分で生み出すことはできません。

2つめに、これらの堀は、競合を跳ね返す力はあるものの、それ自体で新たな顧客を呼び寄せ、利益を増やす力はなく、あくまで防御特化な点で「受け」と言えます。上2つの様なサイクルを回す効果はないのです。(一応、得た利益で他の場所の企業を買収したり、新しい油田を掘ればサイクルになるのかもしれませんが。)

また、外部環境の変化にあまり強くない、という弱点もあります。例としては、法規制なら規制緩和で規制自体がなくなってしまう場合、油田であればシェールガスの普及や中東情勢の影響による石油価格下落などです。

なんとなく文面から伝わるかもしれませんが、自分のビジネスで活用するなら、「受け専門の堀」の活用を第一に考えるのはあまりお勧めしません。
強いモートのように見えるかもしれませんが、同じ許認可を持っている企業同士では、規制による自由度の低さもあってコモディティ化しやすかったりもしますし、他の堀を活用しつつ、「受け専門の堀」も使えたら使う、くらいでしょうか。

これはご参考という程度ですが、私は投資するときも、「受け専門の堀」しかない企業にはあまり僕は投資しません。成長余地があまりない業種が多いのと、政治やらの影響を受けやすく気にしなきゃいけない要素が多くてウォッチが大変だからです。

工夫でつくる堀

高い乗り換えコスト、バリューチェーンがここに当てはまります。

乗り換えコストで工夫ってどんな?と思われる方もいると思うので、例を出して説明します。

カミソリの刃モデルによる囲い込み

カミソリの刃モデルによる囲い込みも一つの方法です。

このブログでも何度かお話していますが、「カミソリの刃モデル」とは、まず本体を(場合によっては安く)買ってもらった上で、その後消耗品で稼いでいくビジネスモデルを言います。

このカミソリの刃モデルの企業のサービスを一度使い始めると、他の競合のサービスに乗り換えるためには、一度買ったハード部分が無駄になるので、心理的なハードルが高くなります。(こういう、「今方針転換するとこれまでの費用が無駄になっちゃって嫌だなあ」っていうのをサンクコストと言います。)

ユーザーデータが蓄積される仕組みを作る

私は株のポートフォーリオ管理アプリを使っています。
買った株の銘柄、数、買値とかを入れると、各株のバランスはどうなっているか、一日に保有株全体でいくら儲かったか、ということがわかるアプリです。
前使っていたアプリは、今持っている株の状態だけが表示されていました。つまり、売ってしまった銘柄のデータは消えていました。一方で、今使っているアプリは、売った後の銘柄のデータも残るようになっていて、いつ、どれくらい得(損)をしたのかが過去も含めてわかるようになっています。
これは、単純にそっち方が便利というのも大きいのですが、乗り換えコストを上げ、別のアプリへの移行を防ぐ、という効果も持っているように思います。別のアプリを使うなら、せっかくこれまで入力してきたことが全部無駄になります。過去の取引データをまた全部入力しなおすのは大変なので、結構ハードル高いです。
このように、「過去のデータをとっておくようにする。」というような機能の追加一つで、(この場合はあまり強いとは言えないものの)モートができるのです。そのような、利便性を高めつつ乗り換えコストを高められる機能が追加できないか、工夫の余地があると思います。

上で挙げた「AIによるデータ活用」でもデータ取得の重要性についてご説明しましたが、AI等を使わなくても、ユーザーデータが蓄積される仕組みだけでも囲い込み効果は一定程度見込める、ということですね。(AIを使った場合と比べれば、サービスの品質向上にはつながりにくいので正のフィードバックループは働きにくいですが。)

顧客にとって非常に重要な課題に取り組む

結局一番大事なのはこれな気がします。

「スイッチングコスト」というと競合への切り替えばかり頭が行ってしまいますが、最大の敵は非消費だったりします。要は、単に使うのをやめる、何もしないことを選ぶってパターンです。

そもそもの課題が顧客にとって大してクリティカルじゃない場合、競合と選ぶ以前に「わざわざお金かけなくても、こんな課題放置でよくない?」ってなっちゃいます。

なので、顧客囲い込みの大前提として、その企業の取り組む課題は顧客にとってどの程度重要なのか?というのは確認しなければならないでしょう。

その他

他には、もっと直接的な方法で行くと、携帯キャリア乗り換え時のように、一定期間内に乗り換える場合には違約金を課す、というのも一つの方法です。(ユーザーの利便性とは相反するので、あまりおすすめできる方法ではありませんが…。)

ここまでがスイッチングコストのお話でした。
もう一つはバリューチェーンなのですが、企業により色んなパターンがあり、このテーマだけで本1冊分くらいの内容があるので、今回は関連する書籍を紹介するにとどめたいと思います。

コラム1:共創の戦略

共創とモートを結び付けて解説している書籍やブログを今のところ私は見たことがありませんが、個人的に最近注目しているのがこの「共創」です。
共創とは、お客さんやファン等の外部のステークホルダーと一緒に製品・サービスを作り上げること。もう少しいうと、外部のステークホルダーを事業成長・運営に巻き込むことを言います。
具体的には、ユーザーのアイディアも取り入れながら新商品を開発したり、社外のクリエイターを活用・教育したり、ファン参加型のイベントを開く、といった方法ですね。

では、共創の何がモートにつながるのでしょうか?具体例を見つつお話しましょう。

Skillzの例:外部のクリエイターを巻き込む

ゲームサービスを提供するSkillzにとって、プレイヤーも顧客である一方で、ゲームクリエイターも同様に重要な顧客として位置づけられています。

クリエイターは、Skillzのプラットフォームを使うことで、通常よりも簡単にゲームを開発することができる上、作ったゲームをプレイヤーに提供することも容易になります。

任天堂などのゲーム会社は自前でゲームを作るのが一般的ですが、Skillzは外部のクリエイターを巻き込む仕組みを作ることで、自社の代わりにゲームを開発してもらっているのです。
最初にヒット商品を当てたものの、そのあとヒット作を生むことができずずっと一つのゲームに頼りきりのスマホゲーム会社も多いですが、この「ヒットゲームを開発する」というゲーム会社にとって最も難しい作業を、外部のクリエイターに任せるというのは中々面白くかつ勇気のいる判断だと感じます。単純に考えて、クリエイターの数が多い方がヒット作が生まれる可能性も作品の幅も広がりますもんね。

後発の競合は、Skillzと同じく外部のクリエイターにゲーム開発をお願いしたくても、プレイヤーのいないプラットフォームでゲームを作ろうとするクリエイターは稀なので、まず自前でゲームを開発してプレイヤーを集めなければなりません。これはまさにネットワーク効果と同じ「卵が先かニワトリが先か」の作用が働いていて、強力なモートとなります。

外部のクリエイターを巻き込むという意味では、一番最初に例を出したiPhoneも同じですね。もしアップルがiPhoneのアプリをすべて自前で開発しようとしていたら、今の「スマホ一つでなんでも片付く」世の中は実現していなかったでしょう。

もう少しライトな例だと、Youtuberが「やってほしいネタがあったらコメント欄に書き込んでくださーい。」などと言っているのも、ネタの考案を外注しているという意味では共創と言えます。

結構応用が利く面白いモートだと思うので、注目していきたいと思います。

NIOの例:顧客を自社コミュニティに取り込む

EVメーカーのNIOですが、ただ車を売るだけでなく、NIO所有者のコミュニティを自ら作り、オンライン・オフラインの両方で所有者同士の交流を促進しています。

これは明らかに、所有者のNIOに対するロイヤリティ向上を狙った施策です。これにより、口コミでNIOファンが新しいNIOファンを読んできて、どんどんNIOファンが増えていきます。いわば綺麗なねずみ講です。

「ファン」という財産がストックされていくことにより、後発のまだファンが少ない企業に対して効率的にマーケティングを行うことができますし、ユーザーの囲い込みも容易になります。これがNIOのモートとなります。

アイドルグループのファン等を見ていても思いますが、ロイヤリティの強いファンは、自ら主体的に自分が好きなものの良さを広めてくれます。そういう「儂が育てた。」みたいなタイプのファンは非常に帰属意識が強く、そう簡単には他のサービスにはなびきませんし、離れていくどころか知人に布教しまくってくれます。
言い方を変えると、そういった顧客は、非常に強く囲い込まれているとともに、ブランド価値の向上にも寄与してくれることでモートを強めます。

これまでは、こういったファンの活動は自然発生的に生まれることが多かったように思いますが、SNSによりファンの影響度が増したこともあり、企業も積極的にファンの活用に乗り出しているように思います。

このように、SkillzとNIOの例で昨今の共創の在り方についてお話しましたが、この「共創」の流れは、これからもさらに進んでいくのではないかと考えています。

ちなみに、「共創」を12個目のモートの類型にしなかったのは、要素を細かく分析していけば、共創のモートはネットワーク効果であったり、ブランドであったり、11個のモートのどれかに分類できるため、11個の類型と並べて整理するのは違和感があったためです。

「共創」は、11個の類型のモートを更に違う角度から構築する手段、と捉えていくことが理論的には綺麗かな、と思っています。

コラム2:強いモートの時代による変遷

これまで11個のモートとその成り立ちを紹介し、その中で「このモートは強い」とか「このモートは弱い」ということも随所でお話してきました。

どのモートが強くどのモートが弱いのか、という点については、時代によって変わってきているように思います。なので、その点にお話していきたいと思います。

かつて強かったモート

20世紀に強かった米国の企業をいくつか例に挙げて、それらの企業が武器としていたモートを整理すると、以下のような感じになるかと思います。

  • ベライゾン、AT&T:法規制
  • エクソンモービル:限られた資源
  • コカ・コーラ、フィリップモリス:ブランド
  • ウォールマート:場所・アクセス
  • P&G、ジョンソンエンドジョンソン:特許、ブランド 
  • ほぼすべてに共通:スケールメリット

今強いモート

次に、近年強い米国の企業、いわゆるGAFAMを見てみると、活用している主なモートは

  • ネットワーク効果
  • スケールメリット
  • AIによるデータ活用
  • 囲い込み

辺りになっています。

顧客を囲い込みつつ、「自己強化するモート」でガンガン成長していくというのが近年の大企業のスタイルです。

「変わらない」強みから「変わり続ける」強みへ

このような変化を見ていると、一つの傾向が見えてきます。

かつての大企業は「変わらないこと」を武器にしてきました。

例えば、コカ・コーラやフィリップモリスのブランドは、常に同じイメージを消費者に遡及し続けることで成立してきました。お金をかけてブランドイメージを強化することはあっても、遡及するイメージ自体は不変です。

ベライゾン、AT&T等の通信業界も、法規制に守られた閉じた業界の中で、規制の範囲内の業務を粛々と行っていく中で大きくなりました。代わりに、新規事業をバンバンやって成長を目指すような自由度は失われました。

例えていうと、かつての大企業の強さは「岩のような強さ」です。固いが故に、壊れない。

一方で、GAFAM等が活用しているネットワーク効果やAIによるデータ活用は、元々変化を織り込んでいるものです。この「変わり続けられる」という特徴が、現在の大企業に共通する仕組みのように思います。変わらない強みで競合を跳ね返すのではなく、自ら進んで変化をすることで、追ってくる競合を引き離すスタイルです。

そのイメージは、岩のような固いものではなく、もっと柔軟で、しなやかで、ダイナミックなものです。

テクノロジーの変化もあり、社会の変化はますます加速していると言われています。
それらの変化に対応していくためには、「変わらない強さ」よりも「変わり続ける強さ」が重要になっているように思います。

これは完全に私の話なので読み飛ばしていただいても大丈夫なのですが、上記のような変化も考慮し、私は投資において「企業のブランド力」はあまり重視しすぎないようにしています。

メディアが限定的であった昔は、テレビやラジオに広告を載せられる企業だけが自分たちの商品を知らせることができ、そうでない製品は存在を知られることすら難しい状態でした。

しかし今は、インターネットの普及によってメディアが多様化し、ニッチな商品でも多くの人の目に触れる機会が生まれました。CMで作られた人為的なイメージよりも、SNSのオーガニックな口コミの方が参考になると考える消費者も増えているように思います。ブランド力で劣る後発企業でも人の目に触れられるということは、ブランドというモートの弱体化を意味します。

また、ブランドが飽きられるスピードも加速しているように思います。今は高いブランド力を持っているように見えても、単に「よく見る」「イメージが良い」というだけでは、あっという間に過去のものになってしまうかもしれません。

このような理由から、ブランド力は、あるに越したことはありませんが、当てにしすぎると怖いなあと思っています。

もっと詳しく知りたい方への参考書籍

この記事で書いた内容をより深く理解したい!という方に、今回の記事を書くに当たり私が参考にした書籍を紹介していきます。(画像をクリックすればAmazonに飛べます。)

千年投資の公理


千年投資の公理 ──売られ過ぎの優良企業を買う

投資家が長期間にわたって通常以上の利益を出す企業を見つけられるよう、エコノミック・モートにはどのようなものがあるのかを紹介している本です。

実業家向けのビジネス書(=自社の事業をどうしていくべきかを考える際に参照するビジネス書)も含め、網羅的にモートについて解説しているという点ではこの本が一番だと思います。

モートは「真似されるのを防ぐ仕組み」なので、強力なモートほど真似しにくくなります。そのため、実業家向けにモートの本を書こうとしても、「強い堀がどんなものかはわかったけど、自社に取り入れようがない、むしろ競合の強さを再確認しただけ。」となりかねず、ウケにくい。結果、モートを網羅的・客観的に記述した本が少ないんです。

しかし、エコノミックモートを作る作業は長いタイムスパンで取り組まなければならず、「自社の事業をどうしていくべきか」を考える上でも堀の成り立ちを理解しておくことは非常に重要であるため、投資家ならず実務家目線でエコノミックモートの理解を深めたい方にとっても、コーナーに置いてあるこの本を手に取ってみることはとても有益だと思います。

割と薄い本ですし1ページの文字量も少ないので、さらっと読めると思います。

ちなみにこの本は、投資本としてもあまりメジャーな方ではなく、大きな本屋でないと置いていないことが多いので、本屋に立ち読みしに行く場合には先に在庫検索してあることを確認してから見に行くことをお勧めします。

ゼロ・トゥ・ワン 君はゼロから何を生み出せるか


ゼロ・トゥ・ワン 君はゼロから何を生み出せるか

シリコンバレーの超有名投資家、ピーター・ティールの本です。
「賛成する人のほとんどいない、大切な真実とは?」という問いで有名なこの本ですが、第5章「終盤を制する」で、独占企業の特徴を4つ示しています。その4つとは、
1.プロプライエタリ・テクノロジー
2.ネットワーク効果
3.規模の経済(=スケールメリット)
4.ブランディング

です。

これは、上記の整理でいうところの「自己強化するモート」と「投資で強化するモート」にほぼ一致しますね。独占企業と言えるほどその業界で強い力を発揮するには、やはりこれらのモートが必要であるということがうかがえます。

この本は、章によって多岐にわたる内容が書いてあるので、通して読んでも面白いですが、章ごとにつまみ読みしても良いと思います。それほど分厚くない本ですがビジネスのエッセンスが詰まっていてとても刺激的な本です。

ちなみに私のお勧めは、セールスの重要性について書いた第11章「それを作れば、みんなやってくる?」です。「差別化されていないプロダクトでも、営業と販売が優れていれば独占を築くことはできる。逆のケースはない。」と言い切っており、「いいものをつくれば売れる」という考え方を真っ向から否定するこの章は、製品の品質で勝負しようと考えている方には必読です。

マイケル・ポーターの競争戦略


〔エッセンシャル版〕マイケル・ポーターの競争戦略

マイケル・ポーター博士は、ハーバードビジネススクールの教授であり、競争戦略論の原点にして頂点です。

上述のバリューチェーンの概念を提唱したのもマイケル・ポーターなので、バリューチェーンについて知りたい方にはこの本をお勧めします。
バリューチェーンの他にも

  • 最高を目指すのではなく、独自性を目指さなければならない
  • 「いかに上手にやるか?」ではなく、「何をやらないか」を考えなければならない。つまり「選択と集中」が重要である。
  • 企業活動は、それぞればらばらに考えず、それぞれが相乗効果を生むようにデザインしなければならない。

等の示唆に富んだ指摘が含まれています。日本的な「なんでもやる。なんでも頑張る。」的な経営に疑問を感じている方には刺さる内容だと思います。

なお、この本は、マイケル・ポーターの著作「競争の戦略」と「競争優位の戦略」を1冊にまとめたものです。「競争の戦略」と「競争優位の戦略」は、コンサルやMBAでは必ずと言っていいほど必読図書にあげられる超重要書籍なのですが、2冊合わせて1000ページを軽く超え、字も細かいため、これら2冊を読破するのはかなり大変です。

それを、2012年に発売されたこの本は、読みやすい字のサイズで、たった300ページ程度にまとめてくれています。しかも、マイケル・ポーター博士自身も作成にかかわっているため、オリジナルの良さや深みを失うことなく、エッセンスを抽出することに成功しています。控えめに言って神です。Amazonのレビュー数も、80件あって平均点4.4点と高水準です。(ちなみに私の感覚として、Amazonのレビュー数が30件以上あって平均点が4.4点あったら、その本の品質はかなり信頼できると思います。食べログでいう3.5点くらいの信頼感があります。)

ベゾス・レター:アマゾンに学ぶ14ヵ条の成長原則


ベゾス・レター アマゾンに学ぶ14ヵ条の成長原則

この本は、Amazonの創業者であるジェフ・ベゾスが毎年株主に宛てて書いている手紙から、Amazonの成長の秘訣を分析した本です。

先ほど紹介したこの図は、この本の「第6条 自分の『弾み車』を理解する」からの抜粋でした。

画像5

「弾み車」とは、元々後ほど紹介する「ビジョナリー・カンパニー2」で提唱された考え方で、成長のサイクルがぐるぐる回るにつれてどんどん勢いを増していく様を表現しています。

個人的には、この第6条と、「Amazonがいかに効果的に失敗を積み重ねてきたか」について解説している第1~3条が特におすすめです。「失敗=ダメ」ではなく「チャレンジしない、現状維持=ダメ」という価値観があったからこそAmazonはここまで大きくなれたのだということがよくわかります。

ストーリーとしての競争戦略 優れた戦略の条件


ストーリーとしての競争戦略 Hitotsubashi Business Review Books

今回の記事は、モートの成り立ちを一つの流れとして理解していただくことを意識して作りました。

この「ストーリーとしての競争戦略」は、戦略を、静的なものでなく、動的にとらえる重要性を教えてくれます。

前半では戦略に関する基本的な内容も(ポーターの理論や、それと対比して語られることの多いバーニーの理論も含めて)解説してくれているので、戦略論の本どれか1冊だけ読みたい、という場合にはこの本はおすすめです。

戦略本では比較的珍しい日本人著者の本なので、訳書が苦手、という人にもお勧めできる良書です。

ビジョナリー・カンパニー 2 – 飛躍の法則/ビジョナリー・カンパニー 弾み車の法則


ビジョナリー・カンパニー 2 – 飛躍の法則


ビジョナリー・カンパニー 弾み車の法則

上で紹介したベゾス・レターの「弾み車」は、「ビジョナリー・カンパニー2」で提唱された考え方です。この「弾み車」を抜き出して、最新の研究成果をまとめたのが「ビジョナリー・カンパニー 弾み車の法則」です。

弾み車がどんなものであるかは、私が何度かお話している「正のフィードバックループ」とほぼ同じ意味です。ざっくり言えば、「どんどん加速していく成長サイクル」ですね。

この記事で紹介したものの他にもどんな弾み車の例があるのか?ということが気になった方は、これらの本を覗いてみてください。

ちなみに、「ビジョナリー・カンパニー」シリーズは、1~5と弾み車の法則で計6冊ありますが、中でも最高傑作と評判のものがこの「ビジョナリー・カンパニー2」です。1を読んでなくても問題ない内容なので、ぜひ読んでみてください。おすすめです。

プラットフォーム革命――経済を支配するビジネスモデルはどう機能し、どう作られるのか


プラットフォーム革命――経済を支配するビジネスモデルはどう機能し、どう作られるのか

最近「プラットフォームビジネス」という名前を聞くことが多いですよね。Amazon、Apple、Facebook、アリババ、メルカリ、Airbnb等々、最近社会を賑わせている会社の多くはこの「プラットフォームビジネス」です。

この本は、プラットフォームビジネスがなぜ強いのか?について解説した本です。答えを言ってしまえば、それは「ネットワーク効果が働くから」なのですが、ネットワーク効果の威力を知る上では、非常に有意義な本です。

プラットフォームビジネスに関する本は、2018年前半くらいに一気にたくさん出たので、他のプラットフォーム本でもいいと思いますが、1冊読んでおくとビジネスのトレンドがつかめてよいと思います。

ファンベース


ファンベース ──支持され、愛され、長く売れ続けるために (ちくま新書)

この本は、単発的なキャンペーンで一過性のお客さんを集めるのではなく、長く応援してくれるファンを育てるための施策について書かれています。

一方的に会社からお客さんに対して情報発信して愛着を深めてもらうだけでなく、お客さんと一緒に商品開発する方法なども触れられていて、「共創」を考える上では非常に参考になる本です。

「エコノミックモート」という観点から書かれた本ではありませんが、「長く競争力を保つための方法」について、多くの示唆が得られます。

新書でサクッと読めるので、おすすめです。

この本は、どちらかといえば「既存のライトファンをコアなファンに育てる」ことに関して書いた本なので、「0からファンを生む」施策については、あまり言及されていません。その点はご注意ください。

まとめ

以上、いかがだったでしょうか。

非常に長くなってしまいましたが、最後まで読んでいただきありがとうございました。

ぜひ感想など聞かせていただければ嬉しいです!

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