ぬくブログ
マルチバガー分析

代表的マルチバガー銘柄の株価の推移と乗り越えてきた調整の大きさを分析してみた

先日の記事で、代表的なマルチバガーの上場来のパフォーマンスを分析してみました。
その結果がこちらです。

この結果を見ていると、
・上の方にある銘柄は、コンスタントに右肩上がりで来たのだろうか?それとも、特定の時期に大きく上げたのだろうか?
・その途中で、どれくらいの調整・我慢の期間を乗り越えて来たのだろうか?
といった疑問が浮かんできませんか?

そのような疑問を少しでも解消するため、今回は、その中でも特に長期にわたって株価が上がっていた5銘柄、AAPL、ADBE、AMZN、NFLX、NVDAを使って、これらの銘柄はどのような株価の推移をたどってきたのかを分析しました。

今回の分析の内容:AAPLを参考に

各銘柄について、4つの観点から分析しています。その4つの観点とは、
①株価はどのような推移をたどったのか?〔左上のグラフ〕
②1年ごとのパフォーマンスはどの程度バラついているのか?〔左下のグラフ〕
③どの程度の期間・深さの調整があったのか?〔右上の表〕
④1日の上昇率順に取引日を並べていきその上昇率をかけていったとき、どこでIPOからの上昇率を超えるのか〔右下の表〕
です。
AAPLを使って順番に解説します。

①株価はどのような推移をたどったのか?

IPOの日の終値を1として、日足終値ベースで株価がどのような推移をたどったかをグラフにしています。
AAPLの場合、1997年後半くらいまで横ばいを続けたあと、2000年まで一気に上がり、そこからドットコムバブルが弾けて3年ほどヨコヨコした後は右肩上がり、ということが見て取れます。

ちなみに上昇が始まった1997年に何があったかというと、7月にスティーブ・ジョブズがアップルに復帰してます。チャートを見るだけでも彼の復帰によってアップルがいかに変わったかが感じられます。彼のすごさを改めて感じますね。

②1年ごとのパフォーマンスはどの程度バラついているのか?

各年の12月31日の終値を、前年の12月31日の終値で割って1年の上昇率を計算しています。
1998年ぐらいから2009年ぐらいまでは年間ダブルバガー(+100%以上)を何度も達成している一方で、ドットコムバブル崩壊の時やリーマンショックの時にはそれぞれ-70%、-50%ほど下落しています。逆に言えば、ジョブズ復帰後は2000年、2002年、2008年以外大きな下落で負えた年はなく、安定した値動きに見えます。

③どの程度の期間・深さの調整があったのか?

大分上の方にいっちゃったのでもう一回載せますね。

右上の表は、一度上場来最高値を更新した後、次に最高値を更新するまでの期間を「調整期間」と定義した上で、調整期間をその日数の長い順に並べたものです。
「調整日数」は取引日ベースなので、大体252~3日で1年になります。一番長い時で、8年以上の間AAPLは最高値を更新できなかったということになります。
「最大下落率」は、最高値から最大(といっても終値ベースなので取引時間中にもっと落ちた可能性もありますが)どれだけ下がったかを表しています。
1991年4月1日に最高値を付けた後、1997年12月23日まで下がり続け最大-81.2%のドローダウンとなった、ということです。やばいですね。
ジョブズ復帰で立て直し、その後は8年以上の調整期間はさすがに経験していないものの、5年間の調整をドットコムバブル崩壊後にくらってたり、2年くらいの調整を2010年代に2度経験していたりしますね。

④1日の上昇率順に取引日を並べていきその上昇率をかけていったとき、どこでIPOからの上昇率を超えるのか

これはちょっと言葉で説明しにくいのですが、私の過去記事を読んでいただいた方には「運命の17日」の記事と同じ分析をしていると言ったらわかりやすいでしょうか。

改めてご説明をすると、

1.日ごとの上昇率を計算する
2.上昇率の良かった順に並べる(並べた結果が左下の表)
3.上昇率を上から複利でかけていく(左下の「累積」の列の数字がそれ)
「累積」の数字がIPOからの上昇率(AAPLの場合1332.7倍)を超えるまでにかかる日数を調べる

という流れで分析してます。

AAPLの場合、これが63日でした。つまり、この63日間さえAAPLの株をホールドしていればAAPLのIPO以来のパフォーマンスを超えられる、逆に言えば、この63日の利益を取り逃すと、残りの10109日のAAPLのパフォーマンスはマイナスになる、ということです。
10172日の取引のうち、たった63日(0.6%)の「稲妻の輝く瞬間」の利益を取り逃すと、1000倍以上になったはずのものがマイナスになるとは、おそろしいですね。
※「稲妻の輝く瞬間」って何?という方はこちらをご参照ください。

以前1年間のパフォーマンスで分析した時は、大体1年間のパフォーマンスが17日の上昇で上回ってしまうという結果だったので、割合にしたら17/253=6.7%でした。それがIPO以来となると0.6%にまで減るとは、ちょっと驚きました。

ADBE、AMZN、NFLX、NVDAも見てみよう

AAPLの例でどんな分析をしたかは大体伝わったでしょうか。
それでは他の4銘柄も見てみましょう。まずは結果をお見せしつつ、横並びで見て傾向を探っていこうと思います。

比較するためにAAPLももう一回載せておきます。

これら5銘柄の結果をみながら、①~④の結果を分析していきましょう。

①株価はどのような推移をたどったのか?

色々言えることはありそうですが、まず見て感じたのは思ったよりギザギザしてるなってことですね。(小並感)
あと感じたのはIPO直後の強い上昇が目立つということでかね。ADBE、AMZN、NVDAは上昇直後に大きく上げていますし、NFLXもIPO直後こそ一旦下げているもののその後鋭く上昇しています。
AAPLもジョブズ復帰で生まれ変わったと考えると1998年のパフォーマンスは非常にいいですし、この5銘柄を見る限り、大化け株を狙うならIPO直後数年はやはりチャンスなのか?という感じはしますね。(あくまでこの5銘柄を見る限り、なのでどこまで一般化できるかはわかりませんが。)

②1年ごとのパフォーマンスはどの程度バラついているのか?

これも色々言えることはありそうですが、個人的に気になったのは、どの銘柄も1年のパフォーマンスが-50%近く又はそれ以下だった年が複数ある、ということです。
あとは、IPOから時間が経つにつれ、上にも下にもパフォーマンスのばらつきが落ち着いてきている、という感じがします。一番大きい上昇も一番大きい下落も、IPOから割と早い段階に起きてます。

ちなみに、ちょっとわかりにくくなっていますが、AMZNの1998年のパフォーマンスはぶっ飛んでいて、966.4%です。間が180%~が途中省略されています。

③どの程度の期間・深さの調整があったのか?

それぞれの銘柄の最長調整期間と最大ドローダウンは以下のとおりです。

AAPL 最長調整期間:8年5ヶ月 最大ドローダウン:‐81.8%
ADBE 
最長調整期間:6年 最大ドローダウン:‐79.9%
AMZN
 最長調整期間:9年10ヶ月 最大ドローダウン:‐94.4%
NFLX 最長調整期間:4年3ヶ月 最大ドローダウン:-82.0%
NVDA 最長調整期間:9年6ヶ月 最大ドローダウン:‐89.7%
平均 最長調整期間:7年7ヶ月 最大ドローダウン:‐85.6%

ドットコムバブルとかリーマンショックとか大きいイベントもあったとはいえ、平均で7年半の調整と85%のドローダウン、一番マシな銘柄でも4年以上の調整、ほぼ80%のドローダウンをくらっているという結果が出ました。個人的には、思っていた以上におつらい結果となっています。

④1日の上昇率順に取引日を並べていきその上昇率をかけていったとき、どこでIPOからの上昇率を超えるのか

5銘柄が上昇率トップの何日目をかけた時にIPO以来のパフォーマンスを超えたかを一覧にすると、以下のようになりました。

AAPL 63日 全取引日の0.6%(63/10172)
ADBE 
61日 全取引日の0.7%(61/8740)
AMZN
 42日 全取引日の0.7%(42/6020)
NFLX 38日 全取引日の0.8%(38/4758)
NVDA 33日 全取引日の0.6%(33/5595)

この5銘柄は綺麗に0.6~0.8%に収まりました。これだけ見ると「どの銘柄も0.6~0.8%に収まるのか?」という印象を与えてしまいそうなので補足すると、他の銘柄でやってみたらこれより低い銘柄はたくさんありますし(IPO以来のパフォーマンスが悪ければ当然この割合も低くなるので。IPOから10000日で0.1%しか上がってない銘柄のパフォーマンスは、1日で超えられるでしょう。)、1%超える銘柄もありました。なのでここまで収束したのはたまたまだとは思いますが、1%以下なのは別に異常値ではない、とは言えそうです。
長期にわたって右肩あがりの印象だったAMZNやNFLXでさえ、たった0.6~0.7%の日の利益を取り逃したらマイナスになってしまうとは…。

結果をどう投資戦略に反映させればよいか

あれこれ分析してきたわけですが、これらの分析は今後の投資に役立てて初めて意味があるので、この結果を踏まえてどう投資戦略に反映させればいいのか?ということを考察していきたいと思います。

とはいえ、これは非常に難しい問題です。

「③どの程度の期間・深さの調整があったのか?」を見る限り、今回分析した5銘柄ほど優れた銘柄であっても5年以上レベルの調整、80%以上のドローダウンは普通に経験しているということでした。
しかも、この5銘柄は最終的に調整を抜けてまた最高値を更新できたからいいものの、そのまま一生沈んだままの銘柄もたくさんあるはずです。生存バイアスがかかってなおこの結果なんです。
おそらくこの結果を見て多くの方は「そんな調整付き合ってられるか。」と思ったのではないでしょうか。
「調整がきたらちゃんと売って、他の銘柄に投資した方が資産効率がいい。80%のドローダウンなんてくらったらたまったものではないから、そうならないようにちゃんと損切りして、塩漬けは避けよう。」と。

しかし、「④1日の上昇率順に取引日を並べていきその上昇率をかけていったとき、どこでIPOからの上昇率を超えるのか」の結果を見ていくと、別の考えが浮かんできます。

400倍~2000倍になったような銘柄でも、たった1%以下の「稲妻の輝く瞬間」を逃せばマイナスパフォーマンスのクソ株なことを考えると、「『稲妻の輝く瞬間』を逃さないためには、極力ホールドしていたいなあ」と思うところです。しかしこれは「調整には付き合わない。調整始まったらさっさと売れ。」という先ほどの考え方と反します。

もちろん、全ての「稲妻の輝く瞬間」に居合わせる必要はありません。そのうちいくつかの恩恵を受けられれば利益は得られるでしょう。
なので、「稲妻の輝く瞬間」を逃さないためには一瞬たりとも手放してはいけない、というわけではありません。パフォーマンスの安定を図る観点からは、多少「稲妻の輝く瞬間」見逃してでもちゃんと損切りしていくのが良いかと思います。

とはいえ、大化け株のはずなのに、買ったタイミングが微妙だったせいで大きな利益につながらなかった経験は私も結構あり、「銘柄選定は正しかったのに…。」と悔しい思いをすることもしばしばでした。
もし銘柄選定にある程度自信がある一方で、短期の値動きを読むことが苦手なのであれば、開き直ってガチホ決め込むのもありだと思います。ただその場合、仮に銘柄選定が正しかったとしても、運が悪ければ5年以上プラ転しなかったり80%以上の含み損を抱えることも覚悟しなければならないのかもしれません。

できれば、特大調整にも捕まりたくないし稲妻の輝く瞬間には立ち合いたいものですが…。

まとめ

というわけで、今回の記事はこれで終えようと思います。いかがでしたでしょうか。

結局どのような投資法が良いのか結論が出ないままではありますが、元来この議論に万人共通の結論は出ませんので、この記事が、皆さんの個々人の判断の材料としてお役に立てば幸いです。

「長期投資を実践するに当たってどれくらいの調整が起こりうるか」を把握した上で、
そんなどでかい調整くらいたくないからこまめに損切りしようと考えるのか、
超大きな調整をくらった銘柄でもそのあと復活しているんだと自分を勇気づけ(ただし生存バイアスがかかっていることは忘れずに)長期投資を頑張るのか、
私自身は…どうしましょうかねえ笑

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