先日、2016年以降にテンバガーを達成した銘柄の一覧を記事にしました。
(前回の記事はこちら。)
今回は、そのうちのTop50銘柄程度を抽出し、各銘柄のセクターの分類、株価の上がり方、業績と株価の関係などについてより深堀をして分析していきたいと思います。
今回分析する銘柄の一覧
今回分析する銘柄は以下の54銘柄です。
ちょうど50銘柄ではなく54銘柄にしたのは、51~54位に皆さんの関心が高そうな銘柄が固まっており、せっかくなので分析対象に入れてしまおうと考えたためです。
なお、前回記事から順位、倍率が若干変わっています。これは、この1週間でATHを更新した銘柄の影響です。
「セクター」は、業務内容を見つつ私の方で分類したものです。
一部カテゴライズに異論のある部分もあるとは思いますが、ご容赦ください。($SE とか。 )
「チャートが右肩上がり」と「利益あり」の列は、このような↓表を54銘柄について私の方で作り、チャートと決算情報を元に分類したものです。
54銘柄の表はすべて最後に付録としてつけておきますのでよかったらご覧ください。
○表の見方
株価成長率:2016~2020年の株価の最低値、最高値、その倍率です。
事業内容:Yahoo financeから引用した、その企業の事業内容です。
チャート:過去5年の週足チャートです。チャート中の赤い線は50日移動平均、黒い線は200日移動平均、下の青い線はPSRの推移です。
決算情報:過去5年間の決算の日付、売上成長率、営業利益率、時価総額を記載しています。たまにこの情報がない銘柄がありますが、それはFINBOXから情報がうまく取れなかったものです。
・売上成長率:マイナスなら緑、40%~100%なら黄色、100%以上なら赤になっています。株価の上昇と成長率が関係しているのかを見るのに、使っています。
・営業利益率:マイナスなら緑になっています。株価の上昇と利益の有無が関係しているのかを見るのに使っています。字が小さくてすいません。
これらの情報を元に、以下のような考え方で「チャートが右肩上がり」フラグと「利益あり」フラグを付けています。
「チャートが右肩上がり」フラグ
5年間のチャートを見て、数年間に渡り上昇トレンドを維持した銘柄に着けています。
一方で、数か月で一気に上昇しテンバガーを達成したものの、長期的に見れば必ずしも上昇トレンドと言えないものは外しています。
例えばこういうやつですね。
つまり、「チャートが右肩上がり」フラグが付いているものは長期投資向き、ついてないものはイベント投資、スイングトレード向きだということです。
「利益あり」の説明
5年間、一定期間(特に株価が伸びているタイミングで)安定して営業利益率がプラスだった銘柄にフラグを付けています。
これは自分的に大きな発見だったのですが、このフラグが立ったのは、54銘柄中15銘柄しかありませんでした。
つまり、残りの39銘柄は、たまに利益を出すことはあっても基本的に赤字企業のまま10バガーを達成したということです。
テンバガーを探したいなら利益率等でスクリーニングはしない方がよさそうですね。
54銘柄のセクター分類
上の一覧にも各銘柄のカテゴリーは書いていますが、カテゴリーごとにまとめると以下のようになります。
バイオ強し。
54銘柄中12銘柄がバイオ株、うち10銘柄はTop30内と、バイオの強さが際立った結果となっています。
また、バイオ以外のヘルスケア部門も強く、7銘柄が続きます。
続いてECが6銘柄(「ゲーム」に分類している$SEを含めると7銘柄)です。$OSTKや$CVNAのように、特定の商品に特化したECもランクインしているのが面白いです。
そのほか、クリーンエネルギー、EV、大麻等、今年大きく上昇したカテゴリーから数銘柄ずつランクインしていますね。
個人的には、SaaS系が思ったより入ってきてないな、という印象を持ちました。入ってきた3銘柄も $FIVN、$CHGG、$RNGとあまりピンとこないメンツです。
(ただ、これらの銘柄の株価・業績面での安定感は、他のカテゴリーにはないハイレベルなものになっていますので、それは後程触れたいと思います。)
バイオ銘柄の深堀
バイオの12銘柄の表をまずお見せします。
その上で、見えてくる傾向について分析してみたいと思います。
これらの表を見ていると、いくつかの傾向が見て取れます。
傾向①:株価が上がるタイミングが限られている。
長期で右肩上がりのチャートが少なく(12銘柄中3銘柄)、短期間で一気に上がっています。
一気に上がるタイミングを逃すと、テンバガーどころか損をすることも考えられ、売買のタイミングについてシビアな判断が求められそうです。
なお、チャートが右肩上がりに見えるのは、$MRTX、$FATE、$ARWRの3銘柄です。
傾向②:ファンダメンタルとの関係のなさ。
利益が出ていないのはもちろんのこと、株価が上がっているタイミングで売上成長率がプラスなのは、$FATE、$ARWR、$NVAXの3銘柄くらいです。
6銘柄はまともに売上すら計上されていません。
つまり、ファンダメンタルの分析に当たって、定量的な情報が手掛かりになりにくいので、持っている技術力や、パイプラインの開発状況などで判断しなければならないということですね。
タイミングもファンダメンタル分析も一筋縄ではいかず、改めてバイオ株の難易度の高さが理解できました。
右肩上がりのチャートが多いセクター
バイオ株と反対に、右肩上がりで安定して値が上がるセクターはどこなのか、と考えると、
・ヘルスケア(非バイオ)
・EC
・SaaS
あたりが挙げられそうです。
例としていくつか表を出します。
ヘルスケア(非バイオ)
きれいな右肩上がりです。
バイオと非バイオでチャートの傾向が違うのは意外に思われるかもしれませんが、消耗品の検査薬や、常に装着しておかなければならない医療機器など、定期的な使用・購入が見込める製品を販売している企業は、業績・株価共に高水準で安定している傾向にあります。
上記の3企業は売上成長率も赤(100%以上)、黄色(40%以上)が多く、高水準で安定していますね。
「冷凍保存・輸送」にカテゴライズした$CYRXや$BLFSもほぼヘルスケア株みたいなものですが、これらも割と株価・業績共に安定しています。($BLFSはちょっとチャート乱れていますが。)
EC
$SHOP、$ETSYもともにきれいな右肩上がりのチャートで、業績も高水準で安定しています。
右肩上がりのチャートと高水準の売上成長率に関係性があるように思えます。
SaaS
ヘルスケア(非バイオ)やECと比べても群を抜いた安定感です。ほぼ直線の200日移動平均線は美しさすら感じます。
ファンダメンタル面で見ると、売上成長率は非常に安定しているものの、どちらの銘柄も一度も40%を上回っていない、というのは面白いポイントです。
20期連続20~35%の成長率というのもなかなかすごいなと思いますが、このくらいの成長率でも5年で30倍近くになれるというのは予期していなかった発見でした。
その他
サンプルが少なかったのでここではあまり説明はしませんでしたが、半導体、ゲーム分野あたりも結構安定した株価推移を見せます。
クリーンエネルギーも、今年は大きな値上がりを見せる銘柄が多かったですが、今後暴れ馬になっていくのか、安定して値を上げる信頼できる銘柄になっていくのか、興味深くウォッチしていきたいと思います。(個人的には、ハード売切型の企業だとなかなか業績・株価が安定しているイメージがわかないですが…。)
まとめ
以上、過去のテンバガーの中でも大きく値を上げた54銘柄について、各銘柄のセクターの分類、株価の上がり方、業績と株価の関係などの観点から分析をしてきました。
まとめると
・赤字企業でもテンバガーになれる。(むしろ利益が出るまで待っていると遅そう。)
・バイオ株は強いが、売買のタイミングをシビアに測る必要がある、技術面での定性的な分析が求められる等、難易度が高い。売上成長率すらあてにならない。
・バイオ以外のヘルスケア、EC、SaaS等の分野は、業績・株価共に安定して伸びる銘柄が見られる。
という感じでしょうか。
やはりバイオ株の爆発力は魅力的だなと思いますし、私の今やっているモメンタム投資にもバイオ株は合うとは思うのですが、とにかく難易度が高いのでEC、バイオ以外のヘルスケア、SaaS当たりをベースにしつつスポット的にバイオを加えていく形が今の私には合っていそうです。
私のモメンタム投資法については以下をご覧ください。
・基本的な内容と有効性に関する理論的な内容についてはこちら
・バックテストの結果とこの投資法が向く銘柄の考察についてはこちら
・2020年11月の投資結果についてはこちら
付録:54銘柄の表(パフォーマンス順)
表を全部載せておきますので、ざーっと眺めるのにお使いください。
ちょっと字が小さくて見ずらいところもあるかとは思いますが、申し訳ありません。
○表の見方
株価成長率:2016~2020年の株価の最低値、最高値、その倍率です。
事業内容:Yahoo financeから引用した、その企業の事業内容です。
チャート:過去5年の週足チャートです。チャート中の赤い線は50日移動平均、黒い線は200日移動平均、下の青い線はPSRの推移です。
決算情報:過去5年間の決算の日付、売上成長率、営業利益率、時価総額を記載しています。たまにこの情報がない銘柄がありますが、それはFINBOXから情報がうまく取れなかったものです。
・売上成長率:マイナスなら緑、40%~100%なら黄色、100%以上なら赤になっています。株価の上昇と成長率が関係しているのかを見るのに、使っています。
・営業利益率:マイナスなら緑になっています。株価の上昇と利益の有無が関係しているのかを見るのに使っています。