前回、71銘柄を使ってIPOからの株価の伸びを分析しました。(前回記事はこちら)
今回は、同じ銘柄をサンプルとして、2010年末からの10年間(と数か月)の株価の伸びを分析したいと思います。
分析した銘柄
分析した以下の54銘柄です。今回は上場から10年以上経っている銘柄に絞っているので、71銘柄から減っています。(17銘柄は上場から10年経ってませんでした。)
10年間の株価の伸びランキング
10年間の株価の伸びランキングは以下のとおりです。「2010/12/31からの伸び」の列が2010年12月31日の終値から2021年4月15日の終値の伸び率です。この伸び率順に並べています。
1位はTSLAで138.7倍。2020年までは伸び悩んでいた銘柄というイメージがありましたが、2013年あたりにも大きく伸びていたようです。
2位のPATKは、全然知りませんでしたが建材メーカーの様です。
2010年末時点では、リーマンショックで一度株価が地に落ちた後の復活したての状況だったので、スタート地点が低いのもあってこの順位です。それにしても100倍はすごいですけどね。
「うち2015/12/31までの伸び」は2010年12月31日から2015年12月31日までの伸び率を、「うち2016/1/1からの伸び」は2015年12月31日から2021年4月15日までの伸び率を書いています。
例えば一番上のTSLAであれば、上半期(2010年12月31日から2015年12月31日まで)で9倍、下半期(2015年12月31日から2021年4月15日まで)で15.4倍になり、合わせて9×15.4=138.7倍になったということです。
見てみると、上半期と下半期のパフォーマンスが乖離している銘柄も結構ありますね。
例えば2位のPATKは上半期で34.3倍になりましたが、その後は3.1倍にとどまり、
逆に4位のAPPSは、上半期に0.9倍と株価が減少していますが、その後58.9倍になっています。
そこで、試しに2015年12月31日までのパフォーマンス順位で並び変えてみると、ちょっと違う世界が見えてきます。その結果がこちら。
どうでしょうか。このランキングを見て、私は長期投資の難しさを改めて感じました。
皆さんは、Top10の銘柄のうち、今買いたいほど魅力を感じる銘柄ってどれくらいありますか?
そもそも、皆さんどれくらい知ってましたか?
「TSLA以外一つも知らなかった」という方も結構いるのではないでしょうか。
ちなみに私もHSKA、LAD、NEOは知りませんでした。買ったことあるのも3年くらい前にABMDとTREEを買ったくらいです。
5年前の時点で勝ち組だった銘柄も、5年経てばほとんど名前も聞かないようになってしまうほどに、米国株式市場の新陳代謝は良くも悪くも活発なのです。
しかも、今回分析対象としている銘柄は、「私が長期で伸びている印象がある銘柄」になっているので、2016年以降本当に絶不調な銘柄というのはそもそも分析対象に入ってきていません。
なのでおそらく、「2015年末までは調子よかったけど今はさっぱりな銘柄」というのは今回分析対象にしている銘柄以外にも沢山あると思われます。
ちなみに、10年間のパフォーマンスランキングで3位のSOXL、4位のAPPS、6位のNVDAは上半期のランキングだとそれぞれ42位、54位(最下位)、39位と、低い順位となっています。
「10年先を見据えた投資」を目指されている方もいるかと思いますが、仮に10年前に、10年先(つまり今)を見据えて、SOXL、APPS、NVDAに投資したとして、2015年末までの順調とは言いにくい時期にホールドし続けられたでしょうか?
まあSOXLとNVDAに関しては5年で2倍になっていて、一般的な基準で考えれば悪いパフォーマンスではないので不可能ではないと思いますが、10年前にこの辺に投資しているということはもっと派手な上昇を期待してたのでしょうから、NXSTやTREEのような銘柄が上がっていくのを横目にSOXL、APPS、NVDAをホールドし続けるのは決して簡単ではなかったと思われます。
「10年先を見据えた投資」をやっていくには、このように数年レベルの我慢の時期を耐える必要がある、ということですね。
上半期・下半期で安定してパフォーマンス挙げた銘柄は?
では、上半期と下半期両方で安定して高いパフォーマンスをあげたのはどのような銘柄だったのか?ということを見るために、表を作ってみました。
横軸が上半期のパフォーマンス、縦軸が下半期のパフォーマンスです。
赤い線が、上半期と下半期が同じパフォーマンスになるラインです。
赤い線より下だと上半期の方がパフォーマンスがよく、赤い線より上だと下半期の方がパフォーマンスが良くなります。
左側が全54銘柄のグラフなのですが、APPS,SOXL,NVDA,PATKが異常値になり真ん中あたりがごちゃごちゃしているので、APPS,SOXL,NVDA,PATKを除いた50銘柄を拡大したのが右の図になります。
安定して高いパフォーマンスを上げた銘柄は、赤い線に近く(=安定)、右上にある(=高い)銘柄なので、TSLA、RGEN、NEO、DXCM、MKTX、NFLX、SLP、MPWR、MA、TCEHYあたりでしょうか。上半期・下半期の両方で5倍以上になっているのがTSLA、RGEN、NEO、NFLXの4銘柄ですね。
これらの銘柄も、安定しているといっても「5年単位で見れば」という話なので、1年間新高値を更新できなかった時期もあります。
長期投資もなかなか簡単ではないですね。
追記:2010-2019年のパフォーマンス
ともさんから、「コロナという特殊要因を除いた2019年までとかも知りたい」とリクエストをいただき、面白そうだったのでそちらも分析してみました。
もしお時間があれば、コロナという特殊要因を除いた2019年までとかも知りたいです。
— とも@米国株YouTuber (@tomosinvest) April 24, 2021
その結果がこちらです。
「2010/12/31からの伸び」と書いてあるのが、ちょっとわかりにくいですが2010年12月31日の終値から2019年12月31日の終値で比較し何倍に伸びているか、という数字です。この数字の大きい順に並べています。1位はPATKになりました。
2020年以降を含めたランキングで上位にいたTSLAやAPPSは順位を落としています。(それぞれ1位→15位、4位→46位)
先ほどと同じように、横軸を2015年末まで、縦軸を2016年1月1日~2019年末でまとめた表を作りました。
赤い線は、上半期と下半期が一緒のラインです。5年のパフォーマンスと4年のパフォーマンスを比較してもあまり意味はありませんが、せっかくなので記載しています。
なお、PATKはこの表に収まらない右の方にあるため省略していますが、そのほかの53銘柄はこの表に収まっています。つまり、2016.1.1以降の4年間で10倍になったのは3倍レバETFであるSOXL以外にないということです。
これを見るとやはり2020年の株価の伸びはすごかったんだなと感じますね。(TSLAやAPPSは1年で10倍近くになっています。)
まとめ
というわけで、今回の分析はいったん以上となります。いかがでしたでしょうか。
個人的には、今回分析してみて銘柄の賞味期限の短さを改めて感じ、長期ガチホするにしても銘柄選定には気を付けなければならないなあと感じました。
(その分、適切な銘柄を選べれば前回の記事のように1000倍になったりもするので、チャレンジする価値はあると思いますが。)
またこのマルチバガー分析系の記事はアップしていく予定なので、ご興味あれば読んでいただければと思います。